月夜に笑った悪魔 (番外編)
「すみません、太郎が頭痛いみたいなんでもう行きますね!」
これ以上は怪しまれる。
それとあのウェイターの男性を逃がしてしまう。
そう思った私はこの場から逃げるためにもう一度ぺこりと頭を下げて、岳を引っ張って歩いた。
岳に言いたいことはたくさんあるけど、今はそれどころじゃない。
ウェイターの男性は、っと……。
必死に探すと、目に入ったその人。
立ちどまってトレイの上に乗せていた飲み物をお客さんに渡しているから、そんなに距離は離れていない。
……よかった。
ほっとひと安心、したのもつかの間。
足を進めていって再びウェイターの男性に近づいたところで、私の手は振り払われ。
急に強い力で押された背中。