月夜に笑った悪魔 (番外編)
そのせいで重心が前にいき、体が倒れ……ドンッ!と人と衝突。
「す、すみません……っ!」
ぱっと顔を上げてぶつかった人を見れば、目が合った男性。
その男性は、追っていたウェイターの男性だった。
それから数秒後、私は気づく。
私が手に持っていたグラス、その中の飲み物を男性にかけてしまったということに。
濡れてしまった男性のシャツ。
男性が持っていたトレイになにも乗っていなかったのは不幸中の幸い。
……私は、今確実に背中を押された。
手を振り払われて、背中を押された。
つまり、こんなことをしたのは岳だ。
接触しろ、とは言われたけどこんなやり方するなんて……!
後ろを振り向くが、岳はいなかった。
また、消えた。
一瞬にしてまた消えるなんて、本当にあの男は忍者かもしれない。