月夜に笑った悪魔 (番外編)
こっちは逃がさないために必死。
ここで断られたらこれ以上は言えなくなる。
あまり強引にいっても怪しまれるだけ。
私は何度も「お願いします」と言って、見つめ続けた。
……そうすると。
「では……」
と、押しに負けてやっと縦に頷いてくれた男性。
「じゃあとりあえず、あっちに行きませんか?」
私が指をさしたのは会場の扉。
はい、と返事が聞こえてくれば私はグラスを置いて。
扉のほうへと行き、会場の外へ。
私のミッションは無事に成功。
……まぁ、成功したのは岳のおかげではあるけど。
「本当にすみませんでした……。あの、着替えはどちらに?」
「下にあるので持ってきます。こちらにいてください」
男性はエレベーターの前で立ちどまるとにこりと笑う。