月夜に笑った悪魔 (番外編)
な、なんだ、春樹さんまで……!
ついこの間まで“美鈴さん”って呼ばれてたはずなのに、“姐御”になってるんだけど!?
「姐御、お体はもう大丈夫ですか?」
いつまでも驚いていれば、持っていた荷物をするりと取られて。
春樹さんは心配そうに私を見つめる。
「あ、うん……。体はもうぜんぜん大丈夫。なんともない」
「そうですか……!よかったです!」
にこりと人懐っこい笑顔を向ける春樹さん。
……“姐御”と私を呼んだところ以外はいつも通り。
「あのさ……。みんな“姐御”って呼んで……急にどうしたの?」
小声で気になったことを聞いてみた。
すると。
「姐御──美鈴さんは、一条組と月城組の戦いを止めた英雄なんですよ。若頭を命懸けで守り、終戦に向けて動いていたので敬意を込めて“姐御”って呼ぼうってことに組員の間でなったんです!」
笑顔で答えてくれた彼。