月夜に笑った悪魔 (番外編)
「よぉ」
被っていたカツラを投げ捨て、岳が声を出す。
この場に響く声。
その声に、ここにいる全員が手をとめてこっちに目を向けた。
目を見開いて、驚いている男性たち。
岳を見て顔色を明らかに悪くし、たじろぐ数人。
けれど、1人男性が前に立って口を開いた。
口を開いたのは茶髪の男性。
「これはこれは、月城岳さんじゃないですか。それと……」
不自然に言葉は切られ、私に向けられた視線。
目が合って、数秒後にはその目は冷ややかな目に変わった。
「……ほんと、月城組は落ちたな」
ぽつりと低い声が落とされる。
プールにいるから響く声。
だからその声はこっちまで確かに聞こえた。