私を愛して


旅行当日、私は笑っていた。

車中では、いつもよりおしゃべりになってた。

写真いっぱい撮ろうね。

なんてない事でも、写真を撮った。


最初で最後の旅行。
沢山あなたとの思い出を作るんだ。
そして笑ってバイバイするんだ。

夜はBBQをした。

大浴場に行って、部屋に帰ってプレゼントを渡す時が来た。

でも、私は咄嗟に手紙を抜き取った。
やっぱり離れるなんて無理だよ。

でも、彼は見ていた。
私が隠した手紙のことを。


「それ何?見せて」

私は拒んだ。でも、どうしても見たいって言ってきた。

私は手紙を渡す代わりに、この手紙は無効にしてねと言い、手紙を渡した。


彼は、ゆっくりと真剣に手紙を読み始めた。

耐えられない。
涙が溢れてくる。

無効にすると言ったけど、私の本音の書かれた手紙を読まれて、怖かった。
終わってしまうんじゃないか。そう思って、涙が止まらない。


読み終えた彼は、私の方を見て「何で泣いてるの?」って言って、抱きしめてくれた。

彼の腕の中で、彼が「俺別れないよ。ずっと離れないよ。大丈夫だから」

私はより泣きじゃくった。
彼は私の涙を拭い、ティッシュを差し出した。

「ほら、鼻かみ」

私は鼻をかみ、彼の方を見た。

彼は何度も、大丈夫だよ。って言ってくれた。

私はこの旅行でバイバイするつもりだったから、本当にどうでもいい写真でも撮りまくってたんだ。

おにぎりを食べてる姿。
熱いお茶を飲んでる姿。
寝転びながら携帯を触ってる姿。

本当に何の変哲もない事でも、写真を撮りまくっていた。


でも、もうあの手紙は無効になり、ただの思い出作りになった。

「何枚写真撮るの?」
「後200枚(笑)」

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