私を愛して


私たちは週に1度しか会えない。

彼の仕事は、祭日も休みがなかったからだ。
土日が休みだけど、どちらかは釣りに行く。


だから、私はいつも思うの。

週末、雨が降りますように。
週末、風が強くなりますように。


釣りが中止になると、2日間遊べる。
お泊まりも出来る。


私は彼の腕の中で眠るのが心地よかった。
彼の腕の中はまるで全身を包み込まれているように感じるのだ。

眠るのはいつも彼が先だった。
私は彼の寝息といびきの中で、安心して眠ることが出来たのだ。


隣との壁が薄いのか、小さな音でテレビの音や扉の閉まる音が聞こえる。


だから、私たちは何をするにも、そーっとしていた。
テレビの音も静かに。
冷蔵庫を閉めるのも静かに。
換気扇も小で。

お喋りも小さな声で。


早く引っ越せばいいのに。
私の家の近くに引っ越してきて欲しいなぁ。
そんな事をよく考えていた。


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