私を愛して
うちでの生活は楽しかった。
ガンと戦うと決めたけど、1本だけと言い聞かせタバコを吸った。
うまーい!
やっぱ、やめられねー。
タバコ1本で、元気になれた。
そして、いよいよ婚姻届の事を、本格的に書くように彼に言われた。
私は、書いた。
私の名字が変わる。
季節は冬だった。
もうすぐ私たちの記念日だった。
彼は、私のサインしたそれを、引き出しにしまった。
記念日を待つことなく、私は再度入院生活に戻った。
また、点滴かぁー。
もう、私の髪はない。
おしゃれなニット帽を被っていた。
娘からのプレゼントだった。
ニット帽と、ウイッグ。
記念日の日、彼は平日にも関わらず昼頃に現れた。
「仕事休んだの?」
「まぁね。」
彼はニヤついている。
「婚姻届出してきたよ!今日から夫婦だよ」
そう、彼はこの日を待っていたのだ。
本当は早く出したかったらしい。
でも、我慢して記念日まで待ったということを教えてくれた。
そっか。
私たち夫婦になったんだね。
彼はケーキを買ってきたけど、1口しか食べれなかった。
私は、あの魔の点滴をしだしてから、みるみる痩せていった。
変わり果てた私の姿にも動じず、彼はいつも優しかった。
愛してくれていた。
こんな病気になるまでは、孤独で彼のことも信じられなかった私は、いつも愛が欲しいと心の中で叫んでいた。
でも、今は愛されてると実感する。
幸せに浸るけれど、病気は去っていってはくれなかった。
私は、また嘔吐を繰り返した。
これは、いつ終わるのだろうか。
先の見えない恐怖と不安。
また、うちに帰れるのだろうか。