キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
ずっと好きだった──勝手に美談にする言葉。
辻堂くんと付き合っていることよりも、文句の1つも言えなくしたその言葉に心がモヤついた。
「私、辻堂くんのこと好きじゃないから。……良かったね、果穂」
私の精一杯の強がりに、果穂は笑顔を見せた。
好きになる前だった。
『辻堂くんに告白されて』と言われても傷つかなかった。
恋になる前に砕け散った気持ちよりも……。
果穂の態度が嫌だった。
素直に友達の幸せを喜べない自分にもモヤモヤ。
両親の離婚、先輩からの陰口、そして失恋。
あの日だけは、不運続きで片づけられるほど軽く捉えられなかった。
嫌なことが重なって……私は、非常階段へ逃げた。