キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
辻堂くんは、目を開いたままの私からさっと目を逸らした。
同じクラスだけど、校外で挨拶を交わすほど仲が良いわけではないから、これが普通の反応。
ただ……あからさまな無視は、辻堂くんにしては珍しい反応な気がする。せめて会釈するとか。
──と呑気に思っていた。
しかし──背中を見せる辻堂くんが、いきなり方向転換。
「坂下!」
振り返って、私の名前を呼ぶ。
それに反応したのは、私と──日南先輩たち。
弾んでいた会話が止まった。
「あ、……えっと…………話!」
「え?」
「そう。話があるんだけど……!」
辻堂くんは、そんなおかしな言葉をかけた。
呼び止めたはいいけど、何を言おうか決めていなかった──みたいな。
話があるようには見えない……。
でも、言いたいことがある……から呼び止めたんだよね?