キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
「また日南先輩だ……」
「どうしたんだろ」
「最近、よく来るよな」
さっきまで飛び交っていた周囲の声が一気に落ちて、日南先輩の噂を始める。
視線を独り占めする噂の彼は、まっすぐと私の方に足を進めていた。
私から零れるのは笑顔。いつの間にか、日南先輩がいる違和感よりも顔を見れた嬉しさが勝るようになった。
もし日南先輩が同級生で、同じクラスだったら……こうして毎日、当たり前のように会えたのかな。
──なんて考える私の前で、日南先輩は立ち止まった。
「どうしたんですか?」
自然と声も弾んでしまう。
一方で、日南先輩はちょっとだけ顔を強張らせていた。
「うん……サリーちゃんに言いたいことがあって」
それでも、私の後ろ──果穂たちを一瞥した後、控えめな笑顔を見せた。
教室にいるみんなは、なぜか黙っている。
聞いてないフリしているけど、こっちに耳を傾けているのがバレバレ。
『言いたいこと』なんて言われたら、私だってドキッとしてしまう。