キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
正体
先輩の陰口を聞いたのは、非常階段で彼と話す数日前────
「あー、もう!サオリのせいですべてがパー」
先生から頼まれ事をされて、放課後にファッション部の備品を運んでいる時だった。
2年3組の教室から聞こえた言葉。
耳を澄まさなくても、廊下にまで聞こえてきた。
サオリという名前の女子は何人かいるから、それが私を指すとは限らないけど。話の内容からそれが私だとわかった。
1年生の作品は絶対にファッションショーに出さない。暗黙の了解。
だけど……私が練習で作った帽子の髪飾り。それを、とあるモデルさんが「使いたい!」と言ってきたのだ。
それが昨日の出来事。
モデルさんの衣装はすでに出来上がっていて、今さら直せない。……でも、その衣装にその髪飾りが合わない。
先輩たちは、コーディネートのやり直しとアレンジを余儀なくされたのだ。
「つーかさ、髪飾り捨てちゃえばよくない?」
……え?
「そっか。失くなれば納得してくれるよね」
「バレなきゃオッケー。彩織なんかのためにうちらが頑張る必要ないし」
「あいつが全部悪いんだから」