キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜

***


「香月って誰だっけ?」


久しぶりに聞いた名前に、足を止める。


「坂下さんの前の名前だよ」

「あー、そっか」


1階の廊下には、生徒が授業で制作した作品が飾られている。先生が高評価をつけたものばかりなので、どれも出来が良い。

それらを、2人の女子生徒が眺めていた。


サリーちゃんの作品もある。

1学期の頃の作品らしいので、作品の前に掲示された名前は「香月」のまま。


「坂下さんって言えばさー、日南先輩とどうなったんだろうね」

「気になるよね。あれからなんの噂も聞かないし」


彼女たちは俺に気づいていない様子。

こんな髪色をしていても、視界に入ってなければいないも同然。


……立ち去った方がいいのかね。
聞いてはいけない会話のような気がする。


足を一歩、踏み出した時だった。


「でも、なんで坂下さんなんだろう?坂下さんって普通の子じゃん」

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