キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
「どうなったのか全然教えてくれねぇから、フラれたのかと思ったぞ」
「失礼だな!フラれてねぇよ」
「良かったね、日南」
「ありがとう」
「これからは遊びに誘えねぇな」
「うん……一度も誘われたことないけどな」
さすが人気者……!
日南先輩を囲う輪はちょっとやそっとのことじゃ解けそうにない。
「おーい、お前ら。さっさと教室に行かないと遅れるぞー」
不意に隣から聞こえた声。
腹の底から出したはずの私の声をかき消せそうなくらい大きな声を、いとも簡単に出すのは石橋先生。
「あ、せんせー。おはよう」
「おはよう、じゃねぇよ。二度と遅刻するなって昨日言ったばかりだろ」
「まだセーフ」
「ギリギリだから注意してるんだろ。……ほら、坂下たちもそろそろ戻れ」
「はーい」と気の抜けた返事をしながらベランダを出ようとした時──
「サリーちゃん!」
名前を呼ばれて振り返る。