キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
嘘だよね。違うよね。
……嘘だと言って。
……違うと言って。
階段の人は、日南先輩、じゃないよね……?
ランウェイの練習が終わって、すぐに体育館を出た私は非常階段へ向かった。
いつもは4階の校内から外へ出るけど、今日は裏庭から直接階段を駆け上がって行く。
いますように。そう心で願いながら……。
2階と3階の間の踊り場で、一旦呼吸を整えて。そこからは、1段1段──ゆっくり階段を上る。足を進めるたびにドキドキが高鳴って。
階数が違うだけで別世界のように感じる3階に辿り着いた時──そこには、誰の姿もなかった。
……ううん。今日はいないだけ。
いつもいるとは限らない。いない日の方が多いもん。だから、いなくても仕方ない。
そう無理に納得しようとしていた私の耳に、声が届く。
「サリーちゃん」