キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜

嘘だよね。違うよね。


……嘘だと言って。
……違うと言って。


階段の人は、日南先輩、じゃないよね……?



ランウェイの練習が終わって、すぐに体育館を出た私は非常階段へ向かった。


いつもは4階の校内から外へ出るけど、今日は裏庭から直接階段を駆け上がって行く。

いますように。そう心で願いながら……。


2階と3階の間の踊り場で、一旦呼吸を整えて。そこからは、1段1段──ゆっくり階段を上る。足を進めるたびにドキドキが高鳴って。


階数が違うだけで別世界のように感じる3階に辿り着いた時──そこには、誰の姿もなかった。


……ううん。今日はいないだけ。

いつもいるとは限らない。いない日の方が多いもん。だから、いなくても仕方ない。


そう無理に納得しようとしていた私の耳に、声が届く。



「サリーちゃん」


< 27 / 273 >

この作品をシェア

pagetop