キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
第1章「ピンク色の出会い」
階段の人
両親が離婚した。
変わったのは、喧嘩の声がなくなったのと名前。
香月彩織から坂下彩織になった。
香月姓を残す手もあったけど、お母さんが嫌がったので、高校1年の2学期から名前を変えた。
まだクラスメイトとも中途半端な距離感。いきなり苗字が変わって、戸惑うのは私だけじゃなくて周りも同じ。
「香月さん、ちょっといいかな」
「はい」
「……あ、じゃなくて、坂下サンだったね。ごめん」
「……ううん」
悲しい余計な会話。
私は、香月のままで良かったのに……。
きっといつかは慣れる。すぐにみんな「坂下」って呼ぶようになる。
そんな未来を想像することさえも、私にとっては戸惑いの対象だった。