キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
1人になりたくて。
誰も私の名前を呼ばない世界に行きたくて。
ふと足を踏み入れたのは、廊下のつきあたりにある非常階段。重い扉を開けて外に出ると、夏を残した風が身体を撫でた。
学校からの景色はどこも同じ──なんて思っていたけれど、初めて来た場所から見る景色はなんだか違って見えた。
手すりに腕を置いて、「はぁ……」と重いため息を吐く。息が抜けいくのを感じながら。
「嫌なことって重なるんだね」
悲劇のヒロインみたいなことを呟く。
たまに『今日はラッキーだな』ってこともあれば、『今日は不運続きだから、静かに過ごそう』と思う日もある。
でもこの日に限っては、不運続きで片づけられるほど軽く捉えられなかった。
不意に漏れた言葉は、誰に届くわけでもなく虚空へ消えていく──と思っていた。
「どうしたの?」
不意に聞こえた声。