キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜

「あ。坂下サン……だっけ?」

「はい……」


ヘアメイクのアシスタント中。
モデルの先輩に声をかけられた。


「あの帽子のアクセ、失くしちゃったんだって?」

「──っ!」

「あたし、あれすごく気に入ったけど……しょうがないよね。来年、楽しみにしてる」


この先輩……私が作った帽子の髪飾りを「使いたい!」と言ってくれた人だ。

白いワンピースに花冠のような髪飾りをした綺麗な人……うん、やっぱり私の髪飾りは似合わない。


「……ありがとう、ございます」


精一杯の笑顔が苦笑いになってしまった。


失くしたわけじゃない。
もう捨てられないように……ちゃんと家にある。

そう言えないのが苦しいけど。

でも、『来年、楽しみにしてる』その言葉だけで幾らか救われた気がする。



そんな私の耳に──


「チッ」


隠す気のない舌打ちが届いた。

< 45 / 273 >

この作品をシェア

pagetop