キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
「あ。坂下サン……だっけ?」
「はい……」
ヘアメイクのアシスタント中。
モデルの先輩に声をかけられた。
「あの帽子のアクセ、失くしちゃったんだって?」
「──っ!」
「あたし、あれすごく気に入ったけど……しょうがないよね。来年、楽しみにしてる」
この先輩……私が作った帽子の髪飾りを「使いたい!」と言ってくれた人だ。
白いワンピースに花冠のような髪飾りをした綺麗な人……うん、やっぱり私の髪飾りは似合わない。
「……ありがとう、ございます」
精一杯の笑顔が苦笑いになってしまった。
失くしたわけじゃない。
もう捨てられないように……ちゃんと家にある。
そう言えないのが苦しいけど。
でも、『来年、楽しみにしてる』その言葉だけで幾らか救われた気がする。
そんな私の耳に──
「チッ」
隠す気のない舌打ちが届いた。