キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜

「俺、基本屋上にいることが多いんだよ」

「はい、知ってます」


「あ、やっぱり?」と小さく笑う日南先輩。


日南先輩だけじゃない。
青柳先輩や桐生先輩たちも屋上にいるのは知っている。

だって、「屋上は問題児集団の溜まり場」は有名な話だから。

近づきたくても近づけない。
ある意味、シャングリラ──理想郷のような場所。


「あの日──サリーちゃんと初めて話した日。あれ、本当に偶然だったんだ。たまたまあの時は非常階段にいた」


階段を1段1段上がりながら日南先輩が言葉を紡いでいく。


「今思えば、過去一の幸運だな」

「……大げさですよ」

「そんなことねぇよ。サリーちゃんと出会えたのは、俺の人生の中で1番の幸運」


日南先輩は、視線を上に向けたまま、照れくさそうに言った。


楽しいことや嬉しいことを、きっとたくさん経験してる。私の知らない世界をたくさん見ている。

……それでも、私と出会えたことが1番と言い切ってくれるのは、素直に嬉しい。


「でも、これからは……」と、屋上のドアの前で立ち止まった日南先輩は、

「非常階段に行きたくなったら、俺に会いたくなったら──ここに来て」


そう言って、ドアを開けた。


< 67 / 273 >

この作品をシェア

pagetop