キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜
「俺、基本屋上にいることが多いんだよ」
「はい、知ってます」
「あ、やっぱり?」と小さく笑う日南先輩。
日南先輩だけじゃない。
青柳先輩や桐生先輩たちも屋上にいるのは知っている。
だって、「屋上は問題児集団の溜まり場」は有名な話だから。
近づきたくても近づけない。
ある意味、シャングリラ──理想郷のような場所。
「あの日──サリーちゃんと初めて話した日。あれ、本当に偶然だったんだ。たまたまあの時は非常階段にいた」
階段を1段1段上がりながら日南先輩が言葉を紡いでいく。
「今思えば、過去一の幸運だな」
「……大げさですよ」
「そんなことねぇよ。サリーちゃんと出会えたのは、俺の人生の中で1番の幸運」
日南先輩は、視線を上に向けたまま、照れくさそうに言った。
楽しいことや嬉しいことを、きっとたくさん経験してる。私の知らない世界をたくさん見ている。
……それでも、私と出会えたことが1番と言い切ってくれるのは、素直に嬉しい。
「でも、これからは……」と、屋上のドアの前で立ち止まった日南先輩は、
「非常階段に行きたくなったら、俺に会いたくなったら──ここに来て」
そう言って、ドアを開けた。