ちょうどいいので結婚します

　功至は、千幸と多華子という組み合わせに気まずさもあったが、千幸があまりにも熱心に多華子を誘うものだから、何か意図があるのかと邪推した。

「ねぇ、やっぱり私、遠慮した方が良かったよね？　一柳くんもちゅきちゃんと二人で食事行きたかったでしょ」
「いや、俺は《《いつでも》》ちゅきちゃんと二人で行けるからな」
「うっわ、腹立つ、何そのドヤ顔。まあいいわ、嬉しい。私も一度ちゅきちゃんと喋って見たかったのよね」
「お前、彼女に変な事言うなよ」
「変な事って例えば？　あんたの本性とか？」
「そ。知られたら、どうなるんだろな」
　多華子はふんっ鼻を鳴らし、ほんとにあんたはしょうがないわね、と笑った。
「ここまで望まれて結婚するってわかれば喜ぶわよ、彼女だって」

　功至はぼんやりとした目でそうかなとつぶやいた。そうだと、いいな。覇気のない様子に、多華子は、バンと功至の背中を叩いた。
「とにかく、いらぬ事を言わぬように！」
　功至は多華子のカツに笑った。
「わかってるわよ、うまくやる。ところで、今日機嫌悪いって経理の子が愚痴ってたわよ、珍しいわね、何かあったの？」
　察し良く、多華子が聞いてくれて、功至は吐き出すことにしたが、自分が一日無駄口を控えただけで噂になるのかと心中は複雑だった。
「それがさぁ、聞いてくれよ」

　功至は今日あったことを多華子に聞かせた。