ちょうどいいので結婚します
 店に着くまでに息もつかずに話してしまい、多華子に制止されたところだった。千幸が合流するまで注文は待つことにして、出された水で喉を潤していた。一息つくと、多華子が切り出した。

「で、その男性とちゅきちゃんがお似合いだって皆が言ったことに腹を立てて一日機嫌が悪かったってことでいい?」

 そう言われては身も蓋もなく、功至は顔を赤くした。
「いや、言っとくけど俺は機嫌が悪かったってのはあいつらが大袈裟に言ってるだけで、そんなことないからな! つか、その前からずーっとモヤってたことがそれきっかけでブチっときただけだから!」

 功至は自分がずっと良一の事を《《相当に》》気にしていたのを自覚した。
「かなり、溜まってたんだよ」
 怒涛のように言い切ってからばつが悪くなって、そっぽを向いた。
「そうみたいね。何があったのよ」
 多華子が穏やかに聞くと、功至も眉を下げ、さっきとはうって変わってぽつりぽつりと話しはじめた。

千幸(ちゅき)ちゃん、俺との結婚、乗り気なんだろうか。いや、さすがに俺と同じくらい楽しみにしてくれとは思わない。無理だ。だって、俺の感情は楽しみなんてレベルはとっくに振り切っていて、」
「いいから、早く説明して。小宮山さん来ちゃうでしょ」
「あ、うん。土曜日な、初めてプライベートで二人で会った。彼女にも挙式のこと、だいたいのヴィジョンを考えておいてって言ったんだけど、彼女、何も準備してなかったんだ。忘れてたみたいで。いや、そんなの全然かまわない。大したことじゃない」

 功至は多華子に話しながら、自分の感情も整理していた。
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