ちょうどいいので結婚します
「二人で相談して決めてもいいし、その為に会うのは俺の部屋にしたんだし」
「え、部屋に呼んだの!?」
「え、うん。へへ」
 功至は何かを思い出すように笑った。多華子の片眉がピクリと動いた。
「あ、ごめん。いいわ、続けて」
「あー……、いいんだけどな。手土産とかそんなの選ぶのに忙しかったんだと思うし、かわいいから何でも許す。でもな? 前の日、あの男と会ってたの見ちゃって、あー……他の男と会う時間はあるんだーって思っちゃった。しかも、すっごい楽しそうにしてんの。あの千幸(ちゅき)ちゃんがだよ? 大袈裟なジャスチャーでゲラゲラ笑ってんの」
「それは、意外ね。想像つかない。確かにもやもやするわね」
「だろ? でだ、今日の昼もな、そいつとランチ行ってたっぽい。それを皆に見られて、お似合いだなんだってっさ。皆の中でそいつが千幸(ちゅき)ちゃんの婚約者ってことになってんだよ。俺なのに、婚約者俺なのに。俺だって千幸(ちゅき)ちゃんとランチ行きたいのに」
 功至がそういうと多華子が噴き出した。
「アンタ、さっき俺はいつでもちゅきちゃんと二人で食事に行けるからいいんだーってドヤってなかった?」
 功至はチッと舌打ちをした。
「ランチは別。千幸(ちゅき)ちゃんってコミュニケーション苦手で誤解されやすいだろ? でも最近はすっごい頑張って部の皆に話しかけてるんだよ。でな、部の皆もちょっとづつ千幸(ちゅき)ちゃんに話しかけるようになって、千幸(ちゅき)ちゃん嬉しそうなんだよ。だから、皆とランチ行くの俺が邪魔しちゃダメだって我慢してた。それでなくても俺都合でもうすぐ会社辞めさせることになるんだし、この時間大事にしてやりたい」

 多華子は関心するように功至の話を聞いていた。
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