ちょうどいいので結婚します
「部の皆とランチだと思ったから我慢してたのに、あの男とランチ行ってたのかよ！　ってなった。そこに皆が追い打ちをかけるものだからつい。わかってる。理不尽な事言ってるってさ……でも、」

　このタイミングで功至のスマホからメッセージ受信の通知音が鳴った。千幸からだった。
『すみません。予定があるのを忘れていました。また次回ご一緒させてください。石川さんにも謝っておいて下さいね』

　功至は片手で顔を覆い大きなため息を吐く。多華子は、さし向けたスマホの画面を確認すると、店員を呼び
「生二つ！」と注文し、ビールが届くタイミングでつまみになるものを何皿か頼んでいた。その間功至は俯いたままだった。

　多華子が届いたジョッキに一方的に乾杯すると、功至はようやく口を開いた。
「これだって、今からあいつと会うのかな。先にあいつとの約束があったんだよ。俺たちはたまたま食事に行く流れになったから断れなかったんだろうか」
「確かに、すごい熱心に誘ってくれたからどうしたのかと思ったけど、私たちを二人で食事に行かせたかったのかしら。アンタに気を使ったんでしょ」
　多華子は功至を慰めたが、功至には逆効果だった。
「俺に気を使うんだったら、向こう断って俺を優先してくれたら良くないか！？」
「正直、私は一柳くんとの仲を疑われて何か言われるのかと思ってた。そしたら、アンタの本性語ってやるくらいのつもりだったのに。あっさり私と一柳くんを二人にさせるのね」
　　
　多華子の言う通りだと功至も思った。
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