ちょうどいいので結婚します

「いや、でも小宮山さんが気にしないからと言って、良くないわよ。部の子たち悪乗りしすぎでしょう、さすがに私の事『彼女』とか呼んだりするのは。あれ、ちゃんと注意した方がいいわよ」
「うん、注意した。機嫌が悪いとか言ったのそれもあるかもね」
「まあね、男女が二人でいたら何かと勘ぐる人が多いのよ。そう見えるってだけ」
　多華子は最後のところだけ強調した。つまり、千幸と良一もそうだと言いたいのだ。功至に悟らせるように、にこりと笑う。功至も仕方なくビールを口につけた。
「うん。彼の事は身内みたいなもんだって千幸(ちゅき)ちゃんから説明を受けてる。それと、石川の事も念のため説明した。彼女は気にしてないかもしれないけど」
「気にしてないふりかもでしょ。気分良い訳ないでしょ、婚約者の周りの女なんて。アンタもそうなんだから」
「うん、そうだな」
「ま。二人がうまくいったら、私に『かわいい、かわいい』言う必要もないんだから。本人に言えばいいでしょ」

　多華子がニッと笑い、功至もふっと気が抜けた。多華子とは、わざわざ、もう二度と二人で会わないという決別宣言のようなことはしないが、今日多華子と二人で食事に来たのは不可抗力である。だが、今後は避けた方がいいという多華子の気遣いだった。

　功至はありがたい気持ちでいた。ならば、千幸のあの男だって特に問題はないのだろう。千幸を信じていないわけでは無かった。

「要するに、嫉妬だ！！」
　功至は飲み干したジョッキをバンッとテーブルに置くと開き直った。