ちょうどいいので結婚します
「もう一回会う。彼女を最後の最後で困らせてしまうし、傷つけてしまうけど、好きだって……ずっと好きだったって言うつもりなんだ」
「うん、そっか」
 多華子は、止めておいたら、とか。今更とかそんな事を言わずに黙って聞いていた。

「向こうのご両親にも俺が行って謝罪する。もし、彼女が責められるようなことがあれば可哀そうだし。あと、試験のテキストとか、勉強のノウハウとか、合格後の実務とか、就職時に斡旋頼める先生とかそんなのもまとめてデータ作ったから渡して……」
「え、そんな何年後かわからないことまでアドバイスするの?」
「うん。何か気になって。彼女、不器用だろ? 勉強はともかく、無口で誤解されやすいし。人脈とか俺と結婚してたら手に入った情報だ。そのくらいしか俺との結婚は彼女にメリットなかっただろうし。彼女は頑張り屋さんだし、彼女の能力を疑ってるわけじゃない。けど……駄目だな。心配なんだ。俺と結婚しなかったからといって、彼女のことをどうでもいいとは思えなくて。彼女が困ってたら相談くらいは乗りたい。きっと、彼女は俺を頼ってくることなんてないだろうけどな。はは」
「……馬鹿ね、ほんと。アンタの方がよっぽど不器用よ」

 結局誰か個人とどうこうなることはなく、また二次会に行くには微妙な時間で解散となった。

 功至は自分が独立するからと狙ってきた子もいると聞いて、父親の助言もあながち嘘ではないのだと思った。どのみちもう自分が結婚するなどという未来は想像出来なかった。
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