ちょうどいいので結婚します
 功至はため息を一つついた。まずは、良一が他の女といて千幸が辛い思いをしていないなら良かったという、安堵のため息だった。これはそんな状況では無かった。

「まずは、誤解してしまい失礼な態度をとりました。申し訳ございません」
 功至が謝罪すると、良一も受け入れ、向き合った。

「こちらこそ、妹が失礼な態度を。謝罪します」
「いえ」
「俺たちは、俺の送別会の帰りです。心情的に早く帰りたかったもので彼女はそれに掩護(えんご)してくれただけです」
「「……」」
 
 千幸と多華子はそれぞれの後ろでおろおろと過ごした。

「誤解したあなたがここへ駆け付ける理由はなんでしょうか。あんな顔をして。俺の予想が当たっていたらいいんだけど……」
 功至が口を開くより早く千幸が遮った。
「良ちゃん、お願い」

 だが、良一は怯まなかった。それは、功至も同じだった。

「一度、四人で話す必要がありそうですね」
 良一が千幸に説得するような表情をした。
「そうですね。どこか店へ行きましょう」

 多華子だけが、「えぇ、私も?」と小さく溢したが、誰も反応しなかった。
「いや、本当に全く無関係なのにぃ」と抗議を続けたが諦めて歩き出した功至に続いた。

「ちー、もういいから、正直に気持ちを言え。何とかする」
 良一はそう千幸に耳打ちした。いつもの千幸なら“無理だよ”と半泣きで言うところだが、良一に強い決心を乗せた目を向けて頷いた。もう、逃げたくないとうい意思表示だった。
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