ちょうどいいので結婚します
 功至は千幸が風呂に入ってる間にアンインストールしたスケジュールアプリを再びインストールしてデータが復元されたことににんまりしていた。

 風呂から上がれば、これをもう一度詰めるかと思ってしまって一息ついた。
「焦るな。今日はもう遅い。寝よう。寝、寝る?」

 功至は慌てて寝室に行くと、布団をバサバサと振ってベッドを整えた。もっと、もっと布団をふかふかにしておけば良かったと後悔した。
「臭くないよな? 干しておけば……って、こんな幸せなことが起こるなんて思わなかっ、」
「功至さん、お風呂いただきま、」
「うわぁ、〇@lmk×fhびおjpkb!!」
  
 千幸は、功至の鼻歌がやんだタイミングを見計らって風呂からあがっていたのだが、功至のから言葉にならない声が出て、きょとんとした。

「どうか、した?」
「や、俺も、風呂に、ハイル」

 片言のような言葉を吐いて風呂へ逃げ込んだ。

 浴室はいつもの一人の時と違い、誰かが入った後はすでに湯気がこもり温かい。
「誰かって千幸(ちゅき)ちゃんだわ」と、功至はセルフ突っ込みを終えると、状況を把握して赤面した。千幸の入った風呂。

「うわぁぁあああああ。俺、絶対死ぬ。明日死ぬんだわ。運使い果たしたわ」

 はた、と顔を上げた。
「や、待てよ。明日死ぬんならちゃんと抱いた後じゃん。本願達成してから死んでんじゃん」

 何気なく風呂のリモコンの時計に目をやると、日付はもう超えていた。

「え、明日になった? 今日? セーフ? アウト?」

 功至は、冷たいシャワーで顔を洗うと首を振った。風呂を出る時には長生きする気満々だった。
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