ちょうどいいので結婚します
 千幸は、ほの暗い部屋の中でぼんやりとした光で目を覚ました。……何時だろうかと横を見ると
「あ、ごめん。起こした?」
 功至がサッとスマホを伏せた。部屋は再び暗くなった。そうだった。と、千幸は夕べの事を思い出した。何も無かった……よね?という事は、寝て、しまったのだ。
「何時、でしょうか」
「ん-、まだ五時」
「もしかして、功至さん寝てない? ごめんなさい、私、寝てしまって」
「大丈夫、寝たよ。ただ、ちょっと……」
 暗闇ではあるが、目が慣れて来ると近くの功至の顔くらいは良く見える。功至はそこで「嬉しくて」と、ふわり笑った。

 その笑顔に千幸の胸がぎゅっと掴まれたようになった。顔が熱くなって恥ずかしい千幸は布団にもぐってしまった。功至は、千幸がまだ眠いのだと勘違いし、
「顔は出しといたほうがいいよ」と、布団をずらしてしまった。その顔を見て、どうやら眠たかったわけじゃないと悟ったらしい。

「もし、もし、もう寝る気がないなら、少し俺に付き合ってくれない?」
 千幸の胸が早鐘を打った。それはそうだ。同じベッドで、先に寝てしまったのだから。早朝ではあるが、まだ暗い。千幸は覚悟を決めて頷いた。功至に身を寄せると、きゅっと固く目を閉じた。

 ピッと音がして、部屋が明るくなった。功至が手元のリモコンで電気を付けたらしい。
「電気付けるの?」
「え?」

 明るい部屋の至近距離で見つめあった。
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