ちょうどいいので結婚します
「何でこんなに栗系が多いんですか?」
「あー、人気商品みたいだよ? (俺の中で)」
「和栗のモンブラン、定番の甘露煮のモンブラン、渋皮煮のタルト、マロングラッセ?
芋とカボチャはなかったんですか? 」
「まあまあ、一番旨いのは栗じゃん。ねえ、ち、小宮山さん」
つい、いつも心をの中で呼ぶように名前で呼び掛けた。誰も気づいてなくて功至は胸を撫で下ろした。

結局、ほうじ茶プリンがいいって言ってた人までタルトを選び、遠慮した千幸にプリンが渡ることになった。和栗のタルトを誰かが選んだ時、一瞬表情が変わった気がして千幸は和栗のモンブランが食べたかったのだと悟った。

次は和栗のモンブランだけ買ってこよう。功至はそう決心した。

「一柳さん、ありがとうございました。ほうじ茶のプリン、初めて食べましたけど、すごく美味しいんですね」
「そっか、良かった。また買ってくるね」
「あ、いえ、そんなつもりじゃ」

今度はさ、《《一緒に》》&行ってもいいね。好きなの選んで貰えるしさ。喉まで出かかった言葉がどうしても言えなかった。

気を使うだろうな。気を使って、嫌って言えないだろうな。功至は千幸をよく見ているからわかった。嫌って言えなくても“嫌だな”って思うのは顔を見てわかった。だから、もし自分が誘って、嫌だと思っているのがわかってしまったら二度と誘えなくなってしまう。千幸が楽しいって思ってくれないと意味がなかった。

功至にはまた和栗のモンブランとほうじ茶のプリンを買ってくることしか出来なかった。
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