ちょうどいいので結婚します
「うまっ! 何これ、聖水?」
「いつも功至さんがいれてくれるものと同じだけど。って、セイスイって何? 美味しいの? 」
「うん。千幸(ちゅき)ちゃんが入れてくれた飲み物の総称」
「功至さんって頭が良すぎるのか時々何言ってるのかわかんない」

 と、言われてしまったが、馬鹿過ぎて何言ってるか分からない自覚はあった。もちろん直す気はさらさら無かった。

「ねぇ、功至さん晩御飯何にする? 今日は勉強ここまでにするから私が作るよ?」
「あ、もう作ってるんだ。千幸(ちゅき)ちゃんの好きな若鳥の黒酢餡かけ」
「いつの間に作ってくれたの? そういえば、職場の近くの定食屋さんで食べたね。パプリカまで美味しかった」
「しまっ……た。パプリカ入れてない。千幸、俺ちょっとスーパー言ってくる!」
 慌てる功至を千幸が止めた。

「ごめんなさい。そんなつもりじゃ……」
「そうだった、パプリカも好きだったね」
「うん。だから功至さんまた今度パプリカの入ったのも作ってくれる? 」
「そっか、《また今度》」
「うん、また今度。また今度がある。こういうのいいなって」

 千幸が恥ずかしそうに言うので、功至もそこに留まった。もちろん、『可愛い』と口に出してしまったが。まだ100回言ってないことにしようと思った。

「じゃあ、久しぶりにお酒のんじゃおうかな」
「いいね。酔ってみてよ、千幸(ちゅき)ちゃん」
「……いいの? 」
「もちろんだよ」

 功至はウキウキしながらキッチンへと向かった。
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