ちょうどいいので結婚します
「うーん、ししゃもの方が付き合い長いからなぁ」
「俺は騙されない。ししゃもにハマったのは大人になってからだと知ってる! 」

 つい、ムキになって張り合ってしまい、千幸はくすくす笑い出してしまって功至はバツが悪くなってしまった。

「さて、《冗談》はこのくらいにして、食べようか。美味しそうに焼けた」
 功至は温めた若鳥の黒酢あんかけとししゃも。サラダと順にテーブルへと運んだ。まずはししゃもを頭から食べる千幸に微笑んだ。

 ああやって、あーんと頭から千幸(ちゅき)ちゃんに食べてもらえるなら、来世はししゃもでもいい。と思ったが、今世は俺のもんだと尾だけになったししゃもに心の中でマウントを取った。

 千幸は酔っても大して変わらなかった。あまり恥ずかしがらずに話すことぐらいだろうかと功至は酒を飲む千幸を愉しんでいた。

「千幸、こっち来て」
 功至が、向かいに座ってた千幸に横に来るように促すと、ためらわずに立ち上がった。

「え、え、」
 驚いたのは功至の方で、慌てて千幸の背中に手を回し支える。

 横に座ると思っていた千幸が功至の上に乗って来たのだ。そして、功至の首に自分の腕を絡めた。
「どうした。千幸(ちゅき)ちゃん」
 功至も満腹状態で、この体勢はなかなかにキツい。いや、それ以上に幸せだが。ひょっとすると千幸は酔うとエロくなるタイプなのではと胸が高鳴った。胸の鼓動以外も昂った。
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