ちょうどいいので結婚します
 千幸が、功至の耳に口寄せて囁く。熱っぽい息が功至の耳、首筋に届く。
「功至さん……」
「うん。千幸」

 ベッドへ行く?功至はそう言おう口を開こうとした。

「眠い……」

 さっと昂っていたものが現実に返り冷えていく。

「えぇぇえ。千幸(ちゅき)ちゃん。今寝るのは色んな意味でダメだって。風呂も歯磨きもまだで、俺もまだ、おーいい」

 そういえば、千幸はあの想いが通じた日さえ寝たことを思い出した。あの日も千幸は相当飲んでいたのかもしれない。わかったのは千幸は酔うと寝る。ということだった。

「さすがに、起きて。風呂と歯磨きは頑張ろう? 」
「んー……」

 結局千幸は歯磨きだけは自分でした。風呂は功至が入れた。とても楽しい時間だった。と後に功至は語った。

「ごめんね、功至さん。せっかくのお休みなのに」
「いや、大丈夫。死ぬほど楽しい」
「何が?」
「何もかもがだ!!」

 とにかく功至は千幸がいれば幸せだった。ただ、千幸にあまり酒を飲ませることがなくなった。

「功至さんて、変。男の人ってみんなそうなの?」
 ふいに千幸がそう言った。功至は自分が変になってることはもちろん知っているが、他の男の人がどうなのかは知らなかった。
「さぁ、千幸は知らなくていいことだからね。他の男の人なんて」

 そう言った功至は心中穏やかでは無かった。
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