ちょうどいいので結婚します
 そりゃあさ、と子供のように言ってみる。
 千幸は笑顔一つで功至の息の根を止めるほど可愛かったが、功至より年上だ。今まで恋愛をしてこなかったわけはない。事実、自分が初めてというわけではなかった。今の千幸の発言から今までの恋人はどうだったのかと過去の男の存在を意識した。

 憂鬱になってふう、と息を吐くと気持ちを悟られないように努めた。お互い大人なんだから。と、自分に言い聞かせた。だが、千幸も何か考え込んでは顔を曇らせた。

「どうかした?」
「ううん。何も。あ、やっぱり……言ってもいい?」
「うん。いいよ」
「功至さんはいつも、か、彼女にはこうなのかなって」

 功至の胸にせり上がってくる感情があった。我慢できずにぎゅうぎゅうと抱きしめる。

「まさか!!! 千幸にだけ。だってこんなにこんなに好きだから」
 千幸は顔を赤くすると功至の顔を見たり、胸に顔を埋めたりを何度も繰り返すと
「私も、功至さんがすごくすごく好き」
 と頑張って言ってくれた。功至はくしゃりと破顔すると、そのまま千幸を抱き上げて寝室へと運んだ。

「さ、千幸が想像したこと、しようかな」
 そう言って千幸をベッドへ下した。真っ赤になった千幸は視線をさ迷わせる。
「やだ、功至さん、そんな手荒なこと……」
「え、千幸(ちゅき)ちゃんどんなこと想像したんだよ」
「えっと……」
「えっと? 」

 軽い嫉妬心は燃え上がらせてくれるものもあるらしい。

「結婚出来て良かった」
 どちらともなく、唇を重ねた。




――――end

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