ちょうどいいので結婚します
──後日。
千幸は社長室のドアを閉めると、昔から一度も破ったことのない“廊下は走らない”という決まりを破って走っていた。信じられない想いで溢れていた。
――父が、結婚を持ちかけてきた相手が一柳さんだなんて。しかも、しかも、『向こうは乗り気』と言った。彼が私との結婚に乗り気!?
千幸は誰かにすれ違っても気づかないくらいにいち早くこの感情を噛み締めたくて走った。
家に帰ると、シャワーへ直行し、それからベッドへと身体を沈めた。枕へ顔を埋めると
「嘘でしょ、嘘でしょおおおおお」
嬉しさで舞い上がり、枕に叫んだ。
功至はいずれ独立する。だから自分と結婚することに個人間以外のメリットはない。自分と結婚するのは経営者の娘だからではないと思う。ということは、功至も自分に好意を持ってくれていたということだろうか。
「まさか、まさか、でも、でも、乗り気って、乗り気って、そういう事だよね!?」
天にも昇る気持ちだった。功至は石川多華子と付き合っているのだと思っていた。千幸は何度も功至と企画部の石川多華子が二人でいるのを眩しく見ていた。華やかな二人は、いつも楽しそうに言い合っていてお似合いに見えた。
仕事上、そんなに接点はないはずの二人だからそういう関係なのだと憶測していた。
まさか、恋人がいるのにそんな不誠実なことはしないだろう。
「恋人いないんだ。石川さんと付き合ってるわけじゃなかったんだ」
千幸は枕に向かってわあわあとはしゃいだ。休み明け、会社で功至とどんな顔で会えばいいのだろうか。恥ずかしいが嬉しかった。
「きっと、一柳さんから何か言ってくれる……よね?」
さすがに会社では顔が緩まないようにしよう。千幸はそう思って引き続き幸せに浸った。
千幸は社長室のドアを閉めると、昔から一度も破ったことのない“廊下は走らない”という決まりを破って走っていた。信じられない想いで溢れていた。
――父が、結婚を持ちかけてきた相手が一柳さんだなんて。しかも、しかも、『向こうは乗り気』と言った。彼が私との結婚に乗り気!?
千幸は誰かにすれ違っても気づかないくらいにいち早くこの感情を噛み締めたくて走った。
家に帰ると、シャワーへ直行し、それからベッドへと身体を沈めた。枕へ顔を埋めると
「嘘でしょ、嘘でしょおおおおお」
嬉しさで舞い上がり、枕に叫んだ。
功至はいずれ独立する。だから自分と結婚することに個人間以外のメリットはない。自分と結婚するのは経営者の娘だからではないと思う。ということは、功至も自分に好意を持ってくれていたということだろうか。
「まさか、まさか、でも、でも、乗り気って、乗り気って、そういう事だよね!?」
天にも昇る気持ちだった。功至は石川多華子と付き合っているのだと思っていた。千幸は何度も功至と企画部の石川多華子が二人でいるのを眩しく見ていた。華やかな二人は、いつも楽しそうに言い合っていてお似合いに見えた。
仕事上、そんなに接点はないはずの二人だからそういう関係なのだと憶測していた。
まさか、恋人がいるのにそんな不誠実なことはしないだろう。
「恋人いないんだ。石川さんと付き合ってるわけじゃなかったんだ」
千幸は枕に向かってわあわあとはしゃいだ。休み明け、会社で功至とどんな顔で会えばいいのだろうか。恥ずかしいが嬉しかった。
「きっと、一柳さんから何か言ってくれる……よね?」
さすがに会社では顔が緩まないようにしよう。千幸はそう思って引き続き幸せに浸った。