ちょうどいいので結婚します
 初めて向き合って座ることになった。

 さっきのやり取りから考えても、結婚の話は耳に入っていて、承諾しているというのは事実らしい。

 功至は熱めに入れて貰ったコーヒー二つをトレーに乗せて安堵していた。千幸のコーヒーにミルクだけ入れるのは、聞かなくても把握していた。

 千幸は功至に座るように言われたソファ席から身動ぎ一つ出来ずに座っていた。そして、功至も結婚の話を把握してることにパニックの最中にいながらも安堵していた。

 ただ向かいあってコーヒーを飲むだけの時間がしばらく過ぎた。

「小宮山さん、結婚の話は聞いてらっしゃるという認識でいいですか」
「はい。一柳さんも、という事でいいですか?」
「はい。それで、今後のことですが」
「はい。うちの両親は私たちに任せると……」
「はい。うちもそう言っていて、それで、年内でどうでしょうか?」

 はい。はい。と言い合う二人は上手く話せなくなっていたが、何とか言葉を繋いでいた。

「年内……。もう10月も終わりに近いのですが、どこまでのことを年内にすればいいのでしょう。なにぶん、初めてのことで」

 千幸は出来るだけ早く結婚はしたかったが、それが引っ越しや結婚準備、仕事の独立で離職するなら引き継ぎのことなどが頭に過った。

 功至にとっても当然初めてのことだが、功至は年内には一緒に住みたいという希望が前面に出すぎてしまった。
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