ちょうどいいので結婚します
『昨日、俺といただろう? ちーの婚約者に誰だって聞かれなかったか? ちゃんと説明したんだろうか。向こうは俺と面識ないんだからな。向こうも女性といたけど、それは会社の人だろ? 俺とは訳が違うだろ』
 千幸は、やっと良一といた自分が功至の目にどう映ったかを自覚した。

 そうか、私も男の人といたのか。しかも、良一は功至からすると知らない男だ。

『でも、一柳さんは何も聞かなかったよ』

『聞かれなくても必ず説明しておくように。とにかく、どんな小さなことでも心配事は少ない方がいい。それでなくてもちーは、そんなんだからな』
そんなんの意味は自覚している。千幸は良一の助言に従うことにした。
『わかった。一柳さんにちゃんと話しておくね』

 昨日、功至の出勤が早かったことを思い出しいつもよりもう少し早く出て最寄り駅で功至を掴まえることにした。

 そして、良一のことを話そう。それから、それから……。千幸は自分のもやもやした感情が何であったか思い出していた。
「……何だっけ?」

 その時、ちょうど良一からまたメッセージが届いた。

『ちーも、一緒にいた女性とはちーが恋人だって誤解するほど二人でいるならそれも嫌なら嫌だって言えよ』

 そうか、私、石川さんと一緒にいるのが気になってたのか。良一からのメッセージを読むと、そう自覚することが出来た。
『ありがとう、良ちゃん』

 千幸は良一にメッセージを返すと慌てて身支度を整えた。
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