ちょうどいいので結婚します
「いません」
 いざ千幸がそう言うと、功至はがっかりしてしまう自分に気づいた。だが、千幸は続けた。

「だけど、私は婚約者がいます」

 そう来たか、功至はしばらくしたら公表するのだからそれでいいかと千幸に頷いてみせた。

「え、親が決めた人ってことですか?」
「おいおい、ほら時間もないし、質問は1つじゃないのか?」
「一人、一つですよ」
 そう来たか。今度の質問は柏木さんだ。それなら、あと三つは質問されることになるじゃないか。

「そうです。親が決めた人です」
「そっかぁ。小宮山さんみたいなお家の人は釣り合いとかありますもんね」
「いえ、私は自分とその人が釣り合ってるとは思いません」

 千幸の言うのは功至がどうではなく謙遜の類いであることはわかっていた。が、そう思わせているのは許容出来なかった。

「じゃあ、その結婚に小宮山さんは納得されているんですか?」
「はい、もちろん」
「そっか、良かったです」
「じゃあ、近々結婚されるってことですよね?」

 功至はこれも質問の一つに入るんだろうなと心配していた。

「まだ何も決まってないのでいつになるかわからないですけど」
「そうですか。報告待ってますね」
「お見合いも今の時代は逆にいいかもしれないですね」
「お見合い、ではないんですけど」
 千幸が控えめに言った。そういうことにしておいても良かったのに、生真面目な性格がそのままにしておけなかったのだろう。
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