ちょうどいいので結婚します
独立したら今より忙しくなるだろう。そこから相手を探すのでは遅いし、家庭を持った方が精神的に落ち着くからと諭しても、暖簾に腕押し状態だった。
学生の頃には資格を取得し将来を見据えた見上げた奴だと思ったのに、ここへ来てこうものんびりするものか。独立もすると行ってから進捗もわからなかった。
「はぁ、全く。何を考えてるのやら」
「交際相手でもいるのでは? 」
「いや、いないらしい。だからこそと言うのだが」
「何の、男のその年なんてまだまだ。これからだよ、勇ちゃん。うちなんて……結婚する気もない。今から資格を取ろうと思うなんて言い出すのだから、女一人で生きていく準備だろうかと疑っているよ」
千幸は功至より一つ上の28歳である。確かに結婚に関しては功至より千幸の方が深刻である。
「しっかりしたいい娘さんじゃないか。ちゃんと自分で稼ごうというのだから。人の金に集まる女なんてごまんといるぞ?」
「そんなんじゃ、可愛げがないんじゃないか。ただでさえ真面目過ぎて、そのうえ年を取れば社内で煙たがられるんじゃないかと心配で。かと言って、会社を継がせるわけにもいかんしなあ……」
「いや、全く。頭の痛いことだ」
愛一郎もまた千幸に何度も見合いをすすめては断られていた。無理矢理連れて行くとか、騙して連れて行くとかそんなことも出来ず、娘の行く末を案じていた。ただでさえ愛想が良くない。加えて、社長の娘とあれば他の社員からは距離を置かれて当然だ。男の影など、全くないのだ。だからこそ親側で探そうと躍起になっているというのに、本人はそれを疎ましく思っているようだった。
学生の頃には資格を取得し将来を見据えた見上げた奴だと思ったのに、ここへ来てこうものんびりするものか。独立もすると行ってから進捗もわからなかった。
「はぁ、全く。何を考えてるのやら」
「交際相手でもいるのでは? 」
「いや、いないらしい。だからこそと言うのだが」
「何の、男のその年なんてまだまだ。これからだよ、勇ちゃん。うちなんて……結婚する気もない。今から資格を取ろうと思うなんて言い出すのだから、女一人で生きていく準備だろうかと疑っているよ」
千幸は功至より一つ上の28歳である。確かに結婚に関しては功至より千幸の方が深刻である。
「しっかりしたいい娘さんじゃないか。ちゃんと自分で稼ごうというのだから。人の金に集まる女なんてごまんといるぞ?」
「そんなんじゃ、可愛げがないんじゃないか。ただでさえ真面目過ぎて、そのうえ年を取れば社内で煙たがられるんじゃないかと心配で。かと言って、会社を継がせるわけにもいかんしなあ……」
「いや、全く。頭の痛いことだ」
愛一郎もまた千幸に何度も見合いをすすめては断られていた。無理矢理連れて行くとか、騙して連れて行くとかそんなことも出来ず、娘の行く末を案じていた。ただでさえ愛想が良くない。加えて、社長の娘とあれば他の社員からは距離を置かれて当然だ。男の影など、全くないのだ。だからこそ親側で探そうと躍起になっているというのに、本人はそれを疎ましく思っているようだった。