ちょうどいいので結婚します
「……え、親が決めた人って、お見合いじゃないんですか?」
「まさか、生まれた時からの許嫁みたいな?」
 功至は今の質問がいくつ目だったかもう数えても意味がないだろうと諦めた。

「いえ、私も今はやりたいことがあったのでお見合いは断っていたのですが、最近結婚のお相手としてどうかと言われた方が、数年来の知り合いだったので、お受けした次第です。良かったと思っています」
「あ、そうか。元々知り合いなら決まったら早そうですよね、確かに」
「そうですね」

 私たちには無縁の世界だわあ。なんて言いながら、ようやく店を出ることになった。

「あ、でも。それって他の知り合いでもオッケーしたってことですか?」
「え、あ……いえ、その人だから、です」
「わあ、いいなあ」
「そりゃそうでしょ。知り合いなら誰でもいいとかなると、先着順じゃない。社内の男が黙ってないわよ」

 千幸は素直にそう言ったが、功至は内心複雑だった。自分の手前、そう言うしかなかったのだろうと、気を使われたと感じた。

「社内の男って?」
 功至は、千幸のことは後で本人と解決するとして、そう言った柏木さんに尋ねてしまった。

「例えば、小宮山さんが知り合いなら受け入れると知った場合、それなら俺もって手を挙げる男の人は多いでしょうね。むしろ、契約結婚だってわかったら、待ったかけたい人、多いんじゃない?」
「なるほど」
 と、納得せざるを得ない。なんせ、千幸はこんなにも可愛いのだから。そう思う男は自分だけじゃないだろうと頷いた。
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