ちょうどいいので結婚します
「あ、汁なのに見えるわけないですね。少し赤いですが大丈夫そうです」
功至にそう言われ、千幸はすぐに目を開き、慌てて腰を落とした。
「すみません。普段はもっとうまく絞れるのですが」
「あ、ああ。ねえ? 普段もお鍋にすだちを? 俺なんてすだちとかぼすの違いも分からないなあ、はは……は」
つまらない。と、功至はそこから言葉が出てこなくなってしまった。自分はこんなつまらない男だったか。もっと、気の利いた話題で千幸を笑わせられたらいいのに。
千幸も普段は汁など飛ばしたこともないのに、なぜ今日はこんなにうまく行かないのかと恥じていた。それに、頬に添えられた手に目を閉じてしまうなんて。そう思うと、何を話していいのか頭が真っ白になってしまっていた。
二人を隔てるテーブルの上をで、鍋だけがグツグツと音を立てていた。
「鱈!」
急に千幸が叫んだ。
「たら?」
「お魚、早く引き上げないと、身が崩れてしまいます」
「あ、ああ。鱈ね、鱈。すだちを絞ると美味しいんだよね」
功至は言ってから思い出した。千幸のさっきの言い訳……『普段はもっとうまく絞れるのですが』思わず吹き出してしまった。単純に、その言い方が可愛すぎないかと思ってだった。
千幸は功至が急に笑ったのに首を傾げた。たが、すくにまた自分が変な言動をしたのかと功至のとんすいに鱈を入れると俯いてしまった。なかなかとんすいを受け取らない功至を盗み見るとまだ肩を震わせていた。
功至にそう言われ、千幸はすぐに目を開き、慌てて腰を落とした。
「すみません。普段はもっとうまく絞れるのですが」
「あ、ああ。ねえ? 普段もお鍋にすだちを? 俺なんてすだちとかぼすの違いも分からないなあ、はは……は」
つまらない。と、功至はそこから言葉が出てこなくなってしまった。自分はこんなつまらない男だったか。もっと、気の利いた話題で千幸を笑わせられたらいいのに。
千幸も普段は汁など飛ばしたこともないのに、なぜ今日はこんなにうまく行かないのかと恥じていた。それに、頬に添えられた手に目を閉じてしまうなんて。そう思うと、何を話していいのか頭が真っ白になってしまっていた。
二人を隔てるテーブルの上をで、鍋だけがグツグツと音を立てていた。
「鱈!」
急に千幸が叫んだ。
「たら?」
「お魚、早く引き上げないと、身が崩れてしまいます」
「あ、ああ。鱈ね、鱈。すだちを絞ると美味しいんだよね」
功至は言ってから思い出した。千幸のさっきの言い訳……『普段はもっとうまく絞れるのですが』思わず吹き出してしまった。単純に、その言い方が可愛すぎないかと思ってだった。
千幸は功至が急に笑ったのに首を傾げた。たが、すくにまた自分が変な言動をしたのかと功至のとんすいに鱈を入れると俯いてしまった。なかなかとんすいを受け取らない功至を盗み見るとまだ肩を震わせていた。