ちょうどいいので結婚します
「先は長い、ですよね」
「うん」
 功至は正直に頷く。資格はいつ取っても問題はない。だが、結婚して子供が出来て、そんな数年後を想像していた功至は大丈夫だろうかと思った。優先すべき順列は?次の試験はもちろん受けるだろう。そうなると、かなり無理をさせてしまうのはないか。結婚式などは試験後に簡易に済ますべきか。いや、でも、千幸(ちゅき)ちゃんのウェディングドレスとか見逃すわけにはいかないではないか。

「すみません、努力して早く資格が取れるようにします」
 千幸は功至の顔が明らかに、強張ったのを見逃さなかった。今更と思われただろうか。

「いえ、あなたの意思ですからもちろん尊重します。ですが……」
 功至は不安そうな顔で自分を見上げる千幸にそこで言葉を切った。自分が先に結婚を進めたいと言うのは負担だっただろうか。

 千幸はただ功至の言葉の続きを待った。

「結婚、独立の手伝い、試験勉強となると……同時進行はかなり厳しいかなと思います。もちろん、結婚準備も引っ越しも独立も俺がほぼ引き受けてもいいと思ってます。それでも結婚はあなたの方が負担は多くなります。申し訳ないですが、どちらかが落ち着いてから、どちらかという順列をつけたらどうでしょうか」

 試験については、受けて合格しても実務経験がいる。資格取得には数年はかかる。だが、独立する限り資格取得に期限はないのだ。つまり、先に結婚したかった。
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