ちょうどいいので結婚します
 千幸にとって、相手が功至であったので即答した結婚話だった。
「そうか、すみません。考えが浅くて」
 功至に言われて無謀であると気づいた。諦める気はない。だが、結婚を決めた以上、功至が最初に意思確認してくれた通り二人のことを優先しようと思った。ゆとりが出来たら勉強にまわして、忘れないようにテキストを開くことだけは続けよう。

 俯く千幸に功至が慌てて付け加えた。

「もちろん、勉強も協力します。諦めろというのではありませんし、仕事のことも資格を取って貰えたら助かることも多いです」
「はい。結婚のことを最優先に考えて下さい」

 お互いにそう言って、安堵のため息を吐いた。先ずは、結婚出来ることに変わりないのだから。

「さあ、そろそろシメの雑炊にしますか」
「そうですね。お腹いっぱいだけど、食べたいなあ」
 千幸はつい言ってしまってハッとした。ここへ来る前は功至の前で食事など出来るかと不安になっていたのだから。

「うん。わかります。鍋って調整出来るのに食べ過ぎてしまいますね」
「はい」

 良一といる時までは程遠いが、少しづつ功至といることにも慣れなければいけなかった。

 お互いに必死だった。楽しませなければと思う功至と、何か話さなければと思う千幸。結局、一番会話が弾んだのは、資格取得に向けての話だった。結婚を優先にすると意思確認を終えて、一番後で良い話をしていたが、何かを会話をしなければという二人の目的は果たされていた。
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