ちょうどいいので結婚します
 別れ際。

 明日も会えるか聞きたい功至だったが、ここへ来て千幸の顔は一番穏やかだった。

 その顔は、自分との食事が終わりホッとしているのが明らかで誘うのをやめた。怖がらせては駄目だ。それに、さすがに毎日会うのは飛ばし過ぎだ。功至は一呼吸置いた。だが、会うのに正当な理由があるというのは有り難い。
「結婚ですが、大体の日取りを決めてしまいましょうか。次回、話し合いましょう。あなたの希望を挙げておいて下さい」
「わかりました。では、今度はいつ会いますか?」
 千幸は、咄嗟に言った。なぜだか不安で次の約束をしておきたかった。

 功至は自分から誘いにくいことを千幸から聞かれ、良かったと胸を撫で下ろした。
「では、今度は休日でどうですか?」
「そうですね、ゆっくり出来ますし。あ、もうゆっくりしてる暇ありませんでしたね」
 あわあわ慌てる千幸に功至は
「いえ、ゆっくりしましょう。あまり必要なことばかりだとしんどくなっちゃいますし。美味しいものでも食べて、えーっと、お酒は飲めるんでしたっけ?」

 千幸が飲んでいるイメージがなかったので聞いた。が、聞いたことで功至は悟ることになった。

「お酒好きです。弱くはないと思います。いつも外食の時は飲んで、気持ちいい程度に酔ってしまって、一緒に飲んでる人に迷惑かけちゃったりして」 

 その失敗を思い出したのか、千幸は頬を赤らめた。
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