ちょうどいいので結婚します
『ああ、私がそっちにいたらすぐに何とかするのに』
　咲由美がそう言って、千幸もそうであればどれだけ心強かったかと思っていた。
『恋でパニックになってる千幸をこの目で見たかった！』
「もう、咲由美！　こっちは本当に困ってるんだから」
『あはは、ごめん、ごめん。恋してる時の典型的な情緒不安定が千幸の男慣れしてないのと相まって、酷い状態だってことだけはわかるわ』
　千幸は酷い言われようだが、事実なので反論はしなかった。
「そうなの、このままじゃ嫌われちゃうんじゃないかって、不安で仕方がないの」
『ふん、それなんだけど、お相手は職場の同僚でしょ？　それなのに付き合いもせず結婚を快諾するってことは、やっぱり千幸の人となりを判断したんだと思うよ。いくら親の勧めでも無理な人と結婚は出来ないもん』
「……そう、かな。そうだよね？」
　確か、功至も乗り気だと言われたはずだ。

『うん。ちーは何で結婚を受けたんだっけ？』
　咲由美はわざともう一度聞いてきたのだ。
「好きだから」
『だよねえ。てことはやっぱり向こうも、少なからず好意は持ってたと思うね』
「……そう、かな。そうだといいな」

　千幸はさすがにそうだよねとは言えなかったが、咲由美にも言われると少しはそうなのかと思ってきた。それなら尚更功至に現滅されたくはなかった。
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