ちょうどいいので結婚します
「やっぱり私、彼に釣り合う女性になりたい!」
『そうね。じゃあ、』
「服、全然持ってないの。その、デートに着ていけるようなものが」
『あー、向こうにどんな服が好きか聞いて一緒に買い物行く?』
「え、そんなの無理よ」
『うん。そうね。そういうのはもう少し後でいいわよね。頑張ってる過程は見せずに、仕上がりを見せてドキッとさせたいものね』

 千幸は単に緊張して無理だったが、咲由美が言うのに納得した。
『うーん、服、服……』
 咲由美はぶつぶつ何かを考えているようだった。

『ま、男の好きそうな服装は男に聞くのが一番だけど、本人に聞けないとなると……。相手間違うとコケるからね。あ、ちー、間違ってもお父さんに聞いちゃ駄目よ』
「う……」
 そうしようと思っていた千幸は言葉に詰まってしまった。
『おじさんのセンスはあちらのご両親に会う時の服装くらいに生かされるわね、きっと』
「なるほど。親受け」
 そりゃそうだ、親が選んだのだからと千幸は納得した。

『ん、良一に付き合うように言っとく。メイクなんかは、おすすめをメッセージで送るから! 見るように!』

 咲由美は勢いよくそう言って電話は切れた。そして、そこから直ぐにメッセージの通知音が鳴った。千幸は咲由美の仕事の早さに吹き出した。だけど、非常に心強かった。もしかして、功至も自分に気があるのかも。そうだといいな。そんな淡い期待を抱いた。
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