ちょうどいいので結婚します
功至への感情は憧れだ。と、千幸は思っている。
経理部は静かな部署で言い方を変えれば暗かった。元々の気質に社長の娘もいるのだ。その娘はまた愛想のいい性格ではない。社員たちは千幸をどう扱っていいかわからないのではないか。それ故、ひたすらに仕事に集中するしかないのだろう。
千幸は自分の責任もあり申し訳ないと思っていたが、功至が会社に来て以来、部署の空気が明るくなった。華のある人間が一人入ると、雰囲気が変わった。功至は千幸にも気軽に話しかけてくれた。
誰でも話せる功至に、つい目が行ってしまい、いつしか千幸の中に功至の存在が大きくなっていった。それに目指す人が近くにいるのは良い刺激にもなった。
「ほら、小宮山さんも一つどうぞ。頭使うと甘いもの欲しくなるよね」
そう言って、パッケージ入りのチョコレートを一つ千幸に差し出した。
「ありがとうございます。私、これ好きなんです」
思わず言ってしまうと
「そう? じゃあまた買ってくるね」
と功至は千幸に笑いかけた。
「あ、そういうつもりじゃ……」
千幸は慌てて遠慮しようとしたが、功至はもう他の人と話していた。
千幸は小さくため息を吐いた。私はどうしていつもこうなのだろう。どうしてすぐに話せないのだろう。功至のくれた小さなチョコレートをゆっくりと口の中で溶かしながらいつものように反省していた。せめて、うまく笑えたら良かったのにと。
経理部は静かな部署で言い方を変えれば暗かった。元々の気質に社長の娘もいるのだ。その娘はまた愛想のいい性格ではない。社員たちは千幸をどう扱っていいかわからないのではないか。それ故、ひたすらに仕事に集中するしかないのだろう。
千幸は自分の責任もあり申し訳ないと思っていたが、功至が会社に来て以来、部署の空気が明るくなった。華のある人間が一人入ると、雰囲気が変わった。功至は千幸にも気軽に話しかけてくれた。
誰でも話せる功至に、つい目が行ってしまい、いつしか千幸の中に功至の存在が大きくなっていった。それに目指す人が近くにいるのは良い刺激にもなった。
「ほら、小宮山さんも一つどうぞ。頭使うと甘いもの欲しくなるよね」
そう言って、パッケージ入りのチョコレートを一つ千幸に差し出した。
「ありがとうございます。私、これ好きなんです」
思わず言ってしまうと
「そう? じゃあまた買ってくるね」
と功至は千幸に笑いかけた。
「あ、そういうつもりじゃ……」
千幸は慌てて遠慮しようとしたが、功至はもう他の人と話していた。
千幸は小さくため息を吐いた。私はどうしていつもこうなのだろう。どうしてすぐに話せないのだろう。功至のくれた小さなチョコレートをゆっくりと口の中で溶かしながらいつものように反省していた。せめて、うまく笑えたら良かったのにと。