ちょうどいいので結婚します
あのあたりに花屋があったなと記憶に従って向かうと、そこに花屋は無かった。記憶違いだったか。最寄り駅に花屋に行こう。その方が確実だ、そう思い、踵を返した。念のため、花屋がないか確認しながら歩いていた。
花屋はなかったが、見つけてしまった。長い片思いのせいで功至の目には千幸の姿はどこにいても後ろ姿でもすぐに見つけられるようになっていた。千幸だと気づいた時にはそんな自分が嫌になった。気づかなければ良かったのに。千幸があの男――良一といたからだ。
今度は、向こうに気づかれないように、死角になる場所へ少し下がった。それは離れた場所から見てもわかる、千幸の恥ずかしそうに頬を染めた様子。それから、楽しそうな姿だった。手を叩いて笑い、身振り手振りの大袈裟な動きで相手に話し、功至のいる場所まで千幸の笑い声が聞こえてくるようだった。早く立ち去りたいのに功至は見たことのない千幸にしばらく足が動かなかった。
二人が移動しそうになって、功至はやっと動くことが出来た。足早に立ち去る。ここ数日、たかが一言話すことに躊躇し、機会を伺い、視線すら合わなかった自分は何なのかと苛立ちを覚えた。絶望に近い感情だった。だが、微かな期待もあった。もしかすると、明日には初めからプライベートで会う明日には、千幸は自分にもあんな自然な笑顔を見せてくれるかもしれないと、そう思う希望のような期待だった。
千幸からメッセージの返信があったのは夜も遅くになってからだった。
花屋はなかったが、見つけてしまった。長い片思いのせいで功至の目には千幸の姿はどこにいても後ろ姿でもすぐに見つけられるようになっていた。千幸だと気づいた時にはそんな自分が嫌になった。気づかなければ良かったのに。千幸があの男――良一といたからだ。
今度は、向こうに気づかれないように、死角になる場所へ少し下がった。それは離れた場所から見てもわかる、千幸の恥ずかしそうに頬を染めた様子。それから、楽しそうな姿だった。手を叩いて笑い、身振り手振りの大袈裟な動きで相手に話し、功至のいる場所まで千幸の笑い声が聞こえてくるようだった。早く立ち去りたいのに功至は見たことのない千幸にしばらく足が動かなかった。
二人が移動しそうになって、功至はやっと動くことが出来た。足早に立ち去る。ここ数日、たかが一言話すことに躊躇し、機会を伺い、視線すら合わなかった自分は何なのかと苛立ちを覚えた。絶望に近い感情だった。だが、微かな期待もあった。もしかすると、明日には初めからプライベートで会う明日には、千幸は自分にもあんな自然な笑顔を見せてくれるかもしれないと、そう思う希望のような期待だった。
千幸からメッセージの返信があったのは夜も遅くになってからだった。