ちょうどいいので結婚します
 「明日には乾くよねえ」
 千幸が功至からのメッセージに気づいたのは買ったばかりの服を洗い、干した後だった。

 差出人“一柳功至”という文字を見ただけで緊張し、正座してメッセージを読んだ。

『お酒、用意しておくけど希望はありますか?』

 何度も何度も読むと、良一に言われた通り自分の意見を言うことにした。

『何でも大丈夫ですが』と前置きして
『ワインも日本酒もカクテルもスパークリングが好きです』

 ドキドキしながら返事を待っていたが、功至からの返事は
『わかりました』
 というシンプルなものだった。自分が気にするほど、向こうにとっては大したことないやりとりなのかもしれない。そう思い、緊張を解いたのだった。

 だが、それからも自分がお邪魔するのだから飲み物は自分が用意すべきだったのでは、今からでもそうメッセージをしようかと時計を見て、遅い時刻に躊躇った。明日起きてすぐにメッセージをすべきか、それとも、

 千幸はあれこれと思い悩み、結局正解が何かわからずにいた。こういうのは苦手だからと避けてはいられない。

「私たちは結婚するのだから」
 口に出すと、現実味が増す。息を整える。明日の朝、起きたら飲み物は自分が用意すると功至に伝えようと決めた。手土産は何を持って行けば良いのだろうかとまた悩むことになった。

「ああ、良ちゃんに聞けばよかった」
 たが、今更また良一に聞くのも、迷惑をかけるだろうとスマホで検索するに留めた。
 
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