ちょうどいいので結婚します
 千幸は落ち込んでいたが、それを功至に悟られ功至に慰められることになり恥ずかしく思っていた。なんとか挽回しようと気持ちを落ち着かせ、功至が熱心に勧めてくれるウェディングドレスを見ていた。

 そこで思い出したのだ。今、良一が選んだシャツワンピースを着ていたが、功至はどんな服が好みなのかと聞きたかったことを。

「一柳さんは、どういったのがお好みですか? 」
 功至の勧めるウェディングドレスには特に偏ってはいなかった。

「そうですね。正直どれでもいいです(絶対どれでも似合うから)」
「どれでもいい、ですか」
 千幸はそう言われてはどれを選んでいいかわからなくなってしまった。
「ええ。試着の際に色々着てはどうでしょう。胸元や背中が大きく開いたものは試着だけで、実際の式では少し抑えたものを」
「試着、ですか?」
「そう。試着は俺しか見ませんからね。見たいけど見せたくはない」
「どういう意味……」
「ま、大きな独り言です。ウェディングドレスで盛り上がってしまいましたが、日付から参りましょう」
「はい」
 
 千幸はずっと心臓あたりを押さえている功至を心配したが「お構いなく」と言われてしまった。二人でタブレットをのぞきこむと随分と顔が近くと千幸は自分が今、本当に功至の隣にいるのだと強く意識せざるを得なかった。
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