ちょうどいいので結婚します
 功至はまた必死に慰めることになった。
「ほら、甘い物は俺が用意してましたし、同じのがあっても食べきれないじゃないですか。甘いもの食べたらしょっぱいもの食べたくなるし。お酒がすすむものばかりで嬉しかったですよ、すごく!!」
「……」
 赤くなったまま、功至を見つめる千幸に
「……すごく」
 功至は深く頷きながら繰り返した。
「はい」
「ね。だから、ほら、お茶を選んで、ケーキもどうぞ」
「ふふ。糖分と塩分が心配な一日になりそうです」

 やっと笑った千幸に功至は
「今日は特別」
 と、笑った。
 どちらのモンブランをどちらが食べるかという小さな押し問答の末、季節限定の紅茶、さつまいものフレーバーティーを入れた。部屋中に甘い香りが漂った。モンブランに芋のお茶?と自分で買っておいて思った功至だったが、飲んでみると、なかなかに美味かった。

「わぁ、美味しい。秋の味覚が一度に味わえて幸せ」
「ミルクティーでもいけそうですね」
「あ、確かに。ふふ、美味しい。だけど、食べたら運動しなくちゃならないですね」
「……運動」
「そうです。二人で出来る運動、何かないかなあ」
「そうですね。夕食まで時間もありますし、式場見学の予約を取れば……え」

 目が合った瞬間、千幸はこれ以上ないくらい真っ赤になって、小さな子がイヤイヤをするように首を振った。「どうしました……」最後まで言い切らないうちに千幸は全身を使って否定した。

「違うんです。二人で出来る運動っていうのはけして、えっちな事を考えたわけでは」
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